キノの旅―The beautiful world

2023年6月2日

キノの旅―The beautiful world (電撃文庫 (0461))
時雨沢 恵一
メディアワークス
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何度か読んでいるだけれど、覚書も兼ねて感想メモを残しておく。
淡々とした中にある仄かな暖かみとか、
ほのぼのとした空気の中にある緊迫感が好きです。
・プロローグ
こういう何気ないけど色々考えさせられるキノとエルメスの会話が大好き。
・第一話 人の痛みが分かる国
ただ読んでるだけだとそうでもないけど、自分がこの国に入ったとしたらと想像すると不気味で嫌だな。
エルメスみたいな相棒がいれば耐えられるかもしれないが…
人間ってお互いをすべて理解し合えばいいものじゃないというか、大切なことだけお互い分かっていればいいんだという気がする。
思ってどんな行動を取るかまで含めてその人の人間性だろうし。
理性を挟まずただ感じたことがそのまま伝わるのは危険だよな。
テレパシーの良し悪しだけじゃなく、思ったことをちゃんと考えてから伝える大切さも教えてくれる気がする。
・第二話 多数決の国
どこに行っても機械にしか遭遇しない国の次はそれにすら会わない国か…
不気味さでは前者のが上かな。なぜ誰もいなくなったのかはものすごく気になるだろうけど。
王の次は多数決が民を苦しめることになったわけか。
偏った権力と偏った考えっていうのはどっちもどっちだな。
なぜ王が悪だったかを考えず王が悪だと決めつけてしまったばかりに、王と同じことを革命を起こした人間がしてしまっている。
キノの去り際の言葉がまさに私が感じたことを全部言い表しているように思った。
・第三話 レールの上の三人の男
1日モトラドで移動しただけの位置で同じ会社からまったく違う命令を受けて仕事をしている人間がいるっていう…
しかも一人目がやっていることの意味がなくなっているのが何とも。
ここまで分り易くない矛盾や無駄は実際あるだろうなぁ。なんとも虚しい。
交換しているなら分かるけどそうじゃないからな;
・第四話 コロシアム
なんやかんや言いながらもエルメスはキノの腕はとっても信用してるよな。
シズはこんな早い段階から登場してるんだったか。
彼との出会いはおぼろげにしか覚えてなかったわ;
馬車に乗っていた若い夫婦がどうなったかが…うーん、これは恐い。
キノが怒っていたのはあの国の国民や王様に対してだけじゃなかったのか。
陸が可愛い。
そしてエルメスと陸の会話も微笑ましくて可愛い。
この頃と言わず一話からキノの性別をほのめかす部分はあったんだけど、最初読んだ時は確信を持てなかったんだよねぇ。
・第五話 大人の国
このシリーズに出てくる国はどれもどこか歪んでいて恐怖心を抱かされるんだけど、ここも絶対生まれたくない国だな。
大人になる手術で大人になった人間がただ洗脳されているだけに思えた。
手術を受けていない子供が手術に疑問を持つのは変なことではないと思う。
ある意味、手術を素直に受ける子供はその時点でこの国の大人になっているのかもしれないなぁ。
エルメスがキノ以外と会話しているのを未読なら、モトラドの声が聞こえたのは幼いキノの精神がショックのあまりエルメスという人格を作り出してしまったのかと勘違いしてしまったかも。
・第六話 平和な国
自分の国が平和ならそれでいいいのかを極端に表したらこうなるかなというか…
自国民以外は同じ人間だと思っていないのが恐い。
他の国もそうだったけど、辛く悲しい過去があって考えだした結論がこれまた残酷っていうのが多いな。
タタタ人がやっている復讐を知ってしまうと、彼らに同情するのもなんか違うなと思ってしまうけどね。
復讐対象と同じことをしているので。
・エピローグ 「森の中で・a」
キノとエルメスの哲学的な会話はいいなぁ。
もう少し読みたかった。

さ行電撃文庫

Posted by tukitohondana

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