歌う石

O.R.メリング,井辻 朱美,O.R.Melling
講談社
発売日:1995-12-12

自分のルーツを探すためにアイルランドに渡ったケイ。
彼女は山の中で見つけたアーチをくぐった瞬間に紀元前のアイルランドへ迷いこんでしまう。
そこでは4つの民族が対立していた。
記憶をなくした謎の少女アエーンと出会い、賢者に助けを求めに行くが…
古代アイルランドを舞台に繰り広げられるファンタジー。
もう十年近く前に一度読んだのですが、また読みたくて購入しました。
O.R.メリングさんの作品は好きなのでぜひ他も揃えていきたいです。
自分探しの旅に出て過去に飛んだケイ。
記憶を失った少女と共に幻視を頼りとした旅を続けることに。
二人のことが心配だけどこの状況はわくわくする。
賢者のフィンタンに出会うとますますファンタジー冒険物らしい雰囲気が増してきていい。
ケイの幻視とアエーンの記憶、そして二人の目的。
二人のやり取りを読んでいると、いいコンビだなと思う。
アンバランスなようで、上手く互いを支えあっているし。
ピンチになる度に強くなっていくケイの力が頼もしい。
何度もハラハラしたけれど、この力とケイの前向きな姿勢があればこれからも大丈夫な気がした。
<見張り>であるダルクの淡々とした様が少し恐い一方で、すごく落ち着いていて魅力的に見える。
絶対獲物にはなりたくないけど。
神、精霊、魔法のような力が自然に存在する世界観が好き。
ふとした瞬間に二つの世界を行き来するような感覚も心地よい。
価値観の違う者たちが時に争い時に協力しながら前に進む様子も好き。
友情とロマンスも物語を盛り上げてくれる。
出会い共に過ごしたのは短い間だったとはいえその結びつきは深いものだったので、別れは辛い。
ケイとカハルは生きる時代が違い、アエーンとアマージンは属する一族が敵対している。
アマージンの相手がアエーンである事、旅をしているうちにアエーンが心身ともに成長していることを考えるとアエーンの正体が分かる気がした。
ケイがいることによって伝えられる歴史そのままに物事が進行し、またエリウが多くの難関を乗り越えるのもまた彼女が女王となるためには必要だった。
何も欠けてはいけない。全ては繋がり環になっている。
そんな物語。
協力者となったフィンタン、エオラス、ラダルク、アマージン、カハル、それぞれのつながりも含めて。
新たな女王の決断と命は一族への愛情と誇りに満ちていて、感動した。
4つの都と宝は遠い忘れ去られた者の産物で、忘れていた真実を知った時、この物語の壮大さをより深く感じた。
時の枠の外に立つものフィンタンの深い知識と意味深な言葉には興味を惹かれる。
彼と再会したことでますますケイの正体が気になった。
旅立つ地上の神々ダナーン族。
ケイとエリウの別れ。
アマージンとアエーンの恋の結末。
友の幸せを願うケイとぼろぼろになってアエーンを引き止めに来たアマージンの姿には視界がにじんだ。
これは偉大な一人の魔術師の誕生の物語であり、そういう意味ではプロローグ的な話だったような気もする。
これからの彼女の多くの冒険と偉業を想像して胸を高鳴らせながらフィンタンの語る真相を読んだ。

ま行

Posted by tukitohondana

inserted by FC2 system