天帝妖狐

【A MASKED BALL】
学校のトイレの落書きが引き起こす恐怖を描く。
トイレの落書きで互いに顔も名前も知らない者たちが交流する。
その辺りは面白くて楽しそうでした。
少しずつほの暗い狂気めいたものがにじみ出てきて、乙一さんらしい作品だなぁと思い始めました。
この少し不気味なところが好きだ。
落書きしてるメンバーなんじゃ……と疑いたくなる人物ばかりで、全員あやしく見えてくる。
あの先生に関してはちょこっとでも疑って申し訳ない気分。
メンバー二人がはっきりでてこなかったのは意外でした。
読み終わって妙に心地いい作品でした。
【天帝妖狐】
少女・杏子はある日行き倒れそうになっていた謎の男・夜木を助ける。
彼は顔中に包帯を巻き、素顔を決して見せない。
杏子とだけは心を通わせようになる夜木だが、そんな彼を凶暴な事件が襲う。
そして、ついに呪われた素顔が暴かれて……
こっくりさん懐かしい…なんとも不思議で不気味なのに身近な要素が入っているのがこれまた怖い。
杏子と夜木さんの出会いにほんのりあたたかいものを感じつつ、手紙の夜木さんが語る過去の顛末が気になって仕方がありませんでした。
早苗との契約後、少しずつ身体が人ではなくなっていく過程が生々しく、自分に置き換えて想像すると本当に辛いなんてものじゃないだろうと思った。
夜木は秋山を殺しかけた時、狂喜している自分を恐ろしく感じていたけれど、その感情は人でも持ちえるもので…
それを恐れ罪の意識にさいなまれる夜木はとても人間らしく読んでいて切なかった。
他人のふりをして互いへの言葉を伝えあう夜木と杏子。
このシーンは泣きそうになった。
二人の関係凄く好きだったから寂しく思ったけれどこの出会いが夜木の中に光として残ったのなら、それはそれでよかったのかもしれない。

あ行

Posted by tukitohondana

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