松永弾正

松永弾正〈上〉 (中公文庫)松永弾正〈下〉 (中公文庫)
策略家で反逆者。
主家を乗っ取り、かつての主を殺した梟雄。
価値が混乱し壊れていく戦乱の世で、素姓も足跡も不明で悪名だけを一身に背負って生きる男がいた。
松永弾正久秀の青春を描く長編歴史小説。

前々から読みたかったのですがなかなか手に入らず、やっと読めて嬉しかったです。
黒くない(かといって真っ白でもない)松永久秀と二人の女性の物語。
流れは基本的に史実通りですが、この物語の特徴は二人の女性との関わりと周囲には危険視されていながら疑いを訂正せず利用する松永久秀像を描いているというところでしょうか。
商人との繋がりも他の松永作品とはまた違った書かれ方をしているかな。
これの長慶はぼんやりとしたイメージでさほど印象には残りませんでした。(頼りないイメージはあった気がしますが、それはある意味どの作品でもそうなので)
彼の近くにいたふよという女性の存在感が強かったせいもあるかもしれません。

私としては、松永弾正は現実はこんな感じで本当は黒くはなかっただろうなと思う一方で、物語的には黒い方が読んでいて面白いなと再確認しました。
この作品の松永弾正も黒いだろうと思う方は多いかと思いますが、他に真っ黒な彼の物語を読んでいるとこの小説の黒さはまた違う気がします。
黒い松永久秀が読みたい方は、野望将軍(笹沢左保)三好長慶(徳永真一郎)がおすすめです。
乱世、夢幻の如し(津本陽)も人間味があっていいかも。
ただ、悪霊―松永弾正久秀(早乙女 貢)は、人物像云々はともかく陵辱シーンの描写がいらないだろうというぐらい多過ぎてどうしても作品としては好きになれませんでした。
さらりと読むなら、松永弾正久秀―梟雄と称された知謀の将(黒部亨)
歴史小説ではありませんが伝奇小説の黎明に叛くもの(宇月原晴明)の松永弾正が個人的には一押し。

た行

Posted by tukitohondana

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