五番目のサリー

五番目のサリー〈上〉 (ダニエル・キイス文庫) 五番目のサリー〈下〉 (ダニエル・キイス文庫)
地味で大人しい平凡な女性サリー・ポーター。
彼女には時々記憶喪失に陥るという悩みがあった。
それが原因で仕事は長続きせず、結婚も破局。
ある事件のため病院に運び込まれたサリーは、精神科医のロジャーに悩みを打ち明けた。
治療によってサリーは、自分の心の中に四つの人格が存在すると知り…
五重人格のサリー・ポーターの人格が統合されるまでの軌跡を描く長編。
 

十年近く前に多重人格に興味を持って読んだ小説です。図書館で見かけて懐かしくなったので再読。
サリーの人格が統合されるまでの物語なのですが、切なくて辛い面もある一方で登場人物に魅力があり大変面白いです。
 

まずそれぞれの人格が個性的で魅力的。(もちろん読んでいて苛立つような欠点もありますが)
多重人格であるという現実を受けいれ、他の人格と融合していくことで一人の人間として変化し成長していくサリー。
その過程はもちろん、それぞれの人格の恋のお相手とのロマンス要素も楽しむことができます。
最初は自らの精神の安定のため生みだしたはずの人格が、自分の生活や心を脅かすというのが何とも言えないです。
サリーの幼少時代の悲惨さや強い個性のせいでそれぞれの人格が抱える問題は特殊に見えなくもないんですが、よく考えると身近にもある悩みや問題と重なる部分もあるんですよね。
そういう視点で読めば、生きるってことはどういうことなのかと考えさせられる内容でもありました。

か行

Posted by tukitohondana

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