女彫刻家

女彫刻家
女彫刻家

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ミネット ウォルターズ
東京創元社
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もう後がないライターのロズに回ってきたのは、服役中の殺人犯オリーヴ・マーティンの本を書くという仕事だった。
母親と妹を切り刻みそれを再び人間の形に並べて、台所の床に血みどろの抽象画を描いた女。
そういうことになっているオリーヴだが、本当に彼女がやったのか?
凶悪な犯行内容だったが精神鑑定の結果は正常で、罪を認め一切の弁護を拒むオリーヴ。
直接オリーヴと会話したロズは、彼女の態度と事件に疑問を覚えるが…

不気味でミステリアスだが、どこか知的なオリーヴは何とも言えない魅力がある。
不安定なロズとこれからどのような会話が交わされていくのか期待が高まった。
オリーヴがなぜ母親と妹を殺したのか?
手がかりを求めてロズが出会う人々もそれぞれ少し癖があって面白い。
しかし、謎は深まるばかり。
不気味な行動を取ったり、ロズに優しく接したり、意味深なことを言ったりとロズを翻弄するオリーヴもまたなかなか真実を語ろうとはしない。
ロズもそう感じた瞬間があるけれど、シスター・ブリジェットという存在がいてくれてよかった。
彼女はそう思わせるような人物だと思う。
サスペンス的要素に加えて、ほんのりロマンス要素もある。
事件絡みで出会った人物ハル(オリーヴを逮捕した警官の一人)が相手なのだけど、彼自身もまた何やらわけありらしく興味を引く。
ロズが不安定になっていた理由を知ってからは、余計に彼女には幸せになって欲しいと感じていたので応援したいが…トラブルの予感もするので複雑だった。
友人アイリスもそうだけど、完全に善い人も悪い人もいなくてそこも好きな作品。
個々にとってはシンプルだけど、複数の人間の思惑と行動が絡み合うことで複雑になってる事件だったな…まさか、オリーヴの件と<ポーチャー>の件に関連性があるとは思っていなかったのでびっくり。
終盤まで分からないことだらけでもやもやしてた分、疑問が一つずつ晴れていくのが心地よかった。
真相そのものは知って憂鬱になるような内容だったけれども。
…いや、これ結局あれなのかな。
うーん、すっきりせずに終わったけど、物語的にはこういう結末は嫌いじゃない。
ハルとスチュアート・ヘイズの休戦の部分も好きです。

あ行

Posted by tukitohondana

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