三国志〈1の巻〉天狼の星

時は天下麻の乱れる如く後漢末、覇業を志す群雄割拠する時が訪れようとしていた。
激しくも哀切な興亡のドラマを描く北方版『三国志』第一巻。
大望や熱い思いを静かに覆い隠しているようなこの劉備が好きだ。
自然とひかれていった関羽と張飛の気持ちがすんなり受け入れられる。
独特な魅力を感じずには入られない。
関羽の冷静さと面倒見の良さも安心感がある。
張飛の感情的なところが可愛い。
黄巾賊と闘うために出る時の劉備が「ともに死のう」と言った時はなんか感動した。
曹操も大望を胸に秘めた人物だけど、また方向性が違っていていい。
プライドが高くてコンプレックスを抱えているところもいいね。
孫堅は荒々しい感じか。
こちらも表面上はそれをかくしているけど計算高いかどうかも三人に差があるよな。
劉備は落ち着いているように見えて感情的だから、関羽と張飛がその難点を補ってる。
一番能力も落ち着きもある分、曹操は孤独に見える。
呂布はマザコンというか母親という存在を特別視している所とか瑤との出会いの話でまず惹かれた。
乱暴だけどどこか可愛く思えてしまう。
凶暴さの隣にある純朴さが魅力かな。
母という存在が重いばかりに幼い頃より縁がなかった父というポジションは彼にとって価値がなかったという設定は彼の行動を思うとしっくりくる。
劉備ら義兄弟の関係もいいけど、呂布と赤兎の関係も一緒にいるのが自然で読んでいて心地良い。
“諸侯参集”で曹操、劉備、孫堅が再度集まるとちょっとテンション上がるな。
戦のシーンの勢いも人物の思考の描写も好みだ。
皆それぞれ熱いものを持っているのだけど個性もそれぞれあって魅力的だしね。
やってる事は酷いのだけど突き抜けて悪党な董卓よりも袁紹の方が鬱陶しいのはなぜなんだろう。
皆を見下しつつ本人が中途半端だからかな。
趙雲のまっすぐな所が可愛い。
劉備に対する態度がたまらない。
趙雲との別れのシーンが大好き。再会が楽しみだ!
張飛も可愛い。
嫌われ役を引き受けてそれを苦に思うことなく劉備を慕っているというのがとても伝わってくる。
孫家の人物は単体より親子のやり取りが好きだったので、ラストが…
実は前に読んで途中で挫折したのですが、続きがとても気になります。
今度こそ最後まで読む。

北方謙三

Posted by tukitohondana

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