三国志 十三の巻 極北の星


天下を三分しなければ戦乱の世はもっと早く終わったのではないか?という元も子もない問を孔明がしてしまっているのが辛いところ。読んでるこちらはそれに近いこと思ってただけに。
かつて劉備たちと見た夢だけを支えに生きてるけど迷っている。優しい気性と歳と孤独のせいもあるけど、優秀ゆえに働きすぎなのも理由な気がする。志も愛憎も喜びも悲しみも全て夢の中だけにしかなく、全ては闇。
出した答えは虚しいとも思えるものだったけれど、穏やかな気持ちになっているみたいだったので悟ったという感じなのかも。
この孔明人間味があって好きだった。

12巻で完結だと勘違いしていたので残念に思っていた姜維の活躍がこの巻で読めたのは嬉しい。
孔明の存在を脅威と感じている司馬懿もいい。司馬懿が生き残ると分かっていても、姜維がもう少しで彼自身の首を取れるかという瞬間は手に汗握った。

緊迫する蜀と魏の話に対して爰京(華佗の弟子)と馬駿白(馬超と袁琳の息子)の旅はとても穏やかなものだった。戦場から離れて久しい馬超がまだ木を剣で切り倒せるのも驚いたけど、あの馬超からこの穏やかな息子ができたのも驚きかも。

相変わらず性癖拗らせてる司馬懿はなんなんだろうな…この孔明との対比。
良くも悪くもこっちは非情というか生々しいのかも。

姜維と孔明の最後の会話に出てくる死に場所について、死に場所は生きていける場所という表現がいいなぁと思った。

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