聖なる血―龍の黙示録

ヴァティカンの密使、甦る古代エジプトの邪王、聖杯…そしてキリストの血を受けた吸血鬼・龍緋比古。
聖杯が邪王の手に渡り龍は最大の危機に陥る。
透子は彼を救うことができるのか?
シリーズ第4弾。
この巻はクロベエ氏とセバスティアーノという重要人物が登場するという面でも重要かつ面白い。
様々な宗教が登場しつつ日本の宗教観の特殊性を出していて、この物語の舞台が日本であるのが必然なような気すらしてくる。(後々は他の国に舞台を移すけれど)
恐ろしい神や魔よりもそれらの影響を受けて異常な言動を取り始めた人間の方が、不気味で恐く怖く感じるのは自分と同じ人間だからかな。
あまり甘さはない小説だけど、龍が透子の危機を救う時に言う台詞とかはドキッとさせられるぐらいロマンス小説してるよなぁ。
偶然か運命か集ったメンバーは二手に分かれて行動するが、クロベエとセバスティアーノ、透子と緋沙子はそれぞれ性格面からみてバランスのいいコンビだと思う。
飢えを抑えられなくなった龍が透子と距離をとろうとするのが切ない。
ネガティブで慎重になってる龍に対する透子の態度を読んでますます二人が好きになり応援したくなった。
愛の形は人それぞれ異なる物。
たとえ二人の間にあるのが恋愛感情でなくても二人には共に生きて欲しい。(透子が人として一生を終えるのだとしても)
透子が龍を抱きかかえているシーンは挿絵で見てみたかった気もするけど、神聖なシーンなので皆の想像に任せるということで良かったのかもしれない。
カバーイラストが若干それをイメージしているようにも見えるけど、物語全体を表してる感じなので違うよね。
クロベエさんとヘテプヘレスの会話に和んだ。
二人がどういう存在なのかを思い出すと余計に面白い。
私の常識はどこに行った?とふと考えてしまう透子がすごく可愛く見えたりもします。(透子としては不本意でしょうが)
新たにして巨大な敵ヴァティカンの影。
もうちょっと先の巻まで読んではいるのですが、戦いの結末は知らないので気になるところです。
今回は主に三組の夫婦が描かれていて、セバスティアーノの葛藤と自分をかつて救ってくれた人物への敬愛、透子に対して芽生えた新たな感情などが描かれていて、やはり愛憎がこのシリーズのメインの一つかなと思います。
スネフェルとの戦いだけでなくセバスティアーノは己の力と過去と戦い、龍と透子も自分たちの関係や感情と戦いも激化してきている。
クロベエ氏とかの存在がなければとても重い巻だったのではないでしょうか。
龍、透子、セバスティアーノだけだとどうも重いか殺伐とした物語になりそうなので、ライル(ライラ)とクロベエの存在って大きいと思います。
皆それぞれ魅力的だしね。
ライラの“大事なのは好かれることより、自分が好きでいること”と語った前後のせりふがなんかぐっときてライラを抱きしめたくなった。
こういう考えはいいな。好きだ。

inserted by FC2 system