水冥き愁いの街―死都ヴェネツィア 龍の黙示録

カトリックの総本山ヴァティカンが“緋色の龍”と怖れ厭う吸血鬼・龍緋比古。
聖なるキリストの血を吸った龍は、カトリックにとっては存在してはならない者だった。
龍の抹殺に枢機卿はついに動き出し、修道士セバスティアーノを拘束、弱点を自白させるためヴェネツィアに移送する。
一方、龍と柚ノ木透子はセバスティアーノ救出のためイタリアに渡った。
しかし、そこには、師を龍に殺され復讐の牙を研ぐ美しき吸血鬼タジオが待っていた…
今や危険な場所となったローマへ帰ったセバスティアーノが自分を好きだったと聞かされた透子。
龍への復讐を望みながら罪人たちの血を吸って生きてきた吸血鬼の少年。
何とも切なく暗めの状況から物語りは始まります。
龍×透子が大好きな私としては、龍、透子、ライルがイタリアへ行くことにするまで会話に萌えた。
なかなか透子の事が好きだと認めようとしない龍が見てて切ないけど好きなんだよなぁ。
この作者の歴史関連のストーリーは時間旅行を、海外の地域文化風景等の現代の描写も旅行気分を味わえて楽しい。
この巻で登場したヴェネツィアも魅力的で行ってみたいと思った。
三人でカフェにいるのは何とも違和感があって実際に見てみたいシーン。
ライラはいつも可愛いけどロリータファッションのライラは可愛いなぁ。
店員の女テロリストとそのボスか? という発想や、だったらあんな目立つ格好はしないだろうという結論に笑った。
確かにあの三人は目立ちそうだ。
ゴンドラで龍がついに想いを伝えるシーンはによによ。
彼なりに透子に自分と共に生きる誘いの言葉を口にするのはときめくな。
長い時を生きてきたからこそ、別れや拒絶を怖れる龍。
強いはずなのに独りで生きる様はどこか危うく儚げですらあり心惹かれるものがあります。
私が彼に透子と幸せになって欲しいと願うのはそのためでしょう。
恋におびえを見せるかと思えば、年齢に見合った経験の豊富さを思わせる。
龍はあの二面性がいい。
人とは遠い存在だと感じさせたかと思えば、物凄く人間臭かったり、とんでもなく強い力の持ち主かと思えば、とてもはかない存在に見えたりとギャップがあるところが好き。
タジオと彼に仕える人々の絆は少し羨ましい。
これといった信念や信仰を持つ人間にも感じるもので、己の中に絶対の存在や信じられるものがあるのには憧れる。
龍、透子に関する事では不安定だよなぁ。
仕方ないんだろうけど;
ライラ視点の彼の言動の考察は面白い。
ライルの場合、彼とつながりがあるから実際そうなんだろうなぁという気がするし。
タジオが龍が共に敵に立ち向かうことを決め、人間の皆にこの家と老人を守れという台詞がかっこよかった。
龍が透子を傷つけられ静かに怒るシーンもいい。
透子があんな目にあったのは読んで辛かったが、立場的にはどんな危険な目にあってもおかしくないからなぁ…
追い詰められた状況でも自分の意思を貫こうとする透子が好きです。
矛盾した所も人間らしくていい。
表面はクールそうでも熱いものを持っているところは龍も透子も似てて大好きな所。
龍と透子をくっつけようとしているライルが読んでいて微笑ましい。
それにしてもセバスティアーノの行動が…何とも。
彼のことも好きだし理解できるのですが、龍が苛立つのも分かる。
マヌエルは敵としてはあの卑劣さも嫌いじゃないが、小物臭がする割りによく生き残ったなと思ってしまった;
透子が放っておけないだろう人物と龍とつながりができた彼が敵の手に落ち、不安だけど次の話を読むのが楽しみだ。

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