狐笛のかなた

上橋 菜穂子
理論社
発売日:2003-11

“聞き耳”の力を受け継いだ少女小夜。森陰の屋敷に幽閉されている少年小春丸。小夜が幼い日に助けた子狐は“あわい”に生まれ使い魔として生きる霊狐の野火。彼らはやがて隣り合う二つの国の過去の因縁と呪いの渦に巻き込まれていく…
ほの暗い雰囲気が漂いつつも優しい和風ファンタジー。
強烈な印象を受けるシーンなどは序盤特になかったのですが、ほんのり漂うあたたかさと世界観に惹かれ物語に入り込んでいきました。
自分の命をかけてでも小夜を救おうとした野火と、そんな野火を使い魔という立場から解き放ちたいと望む小夜。
二人のそれぞれの優しさが読んでいて愛おしく、例え共にではなくても幸せになって欲しいと思いました。
そんな野火たちを見守る木縄坊もまた好き。
亡くなった花乃の想いと危険な戦いへとおもむく小夜と野火の決断と互いへの想い。
恨みと愛情が絡まりあって紡がれる哀しくも美しいおとぎ話という印象。切ないです。
人の想いは情は優しさは、憎しみの連鎖を止められるのか。
それぞれの決断がもたらした結末は、少し切ないけれど温かみがあり穏やかな気持ちになれるものだったように思います。

あ行

Posted by tukitohondana

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