獣の奏者 (4)完結編

上橋 菜穂子
講談社
発売日:2009-08-11

王獣たちを戦に使うため訓練を繰り返すエリン。
けっしてすまいと思っていた事をエリンは自らの意志で行っていく。
隊商都市群の所有権をめぐるラーザとの戦いは激化していく中、王獣を解き放ち、夫と息子と穏やかに暮らしたいと願うエリンの思いは叶うのか?
獣を戦に使うことに対して葛藤するエリンの物語から、ついに戦そのものについて考えさせられる物語へと進んできている。
人間もまた他の動物同様に世界に生きる一種の生物なのだということを再確認させられた。
ジェシやアルの成長が分かる。
王獣への考え方の変化と飛翔には胸が熱くなりました。
それが新たな悲劇を生む事だとしても嬉しかった。
エリン、真王、その他皆が選んだ道の先に待つ結末とは…迫り来る開戦の時、やっと明かされた<災い>の正体。
涙腺もやばかったですが、終盤は鳥肌が立つシーンが多々ありました。
幸せになるのってなんでこんなに難しいんだろう?
過ちを繰り返さないための方法に正解なんかないのかもしれない。
けれど、災いが繰り返される事を未然に防ぎたかった。
もう後はエリンとジェシカが再開できることをただ願うしかできませんでした。
このシリーズでは様々な絆や想いが描かれていますが、2巻のラストを思い出すシーンもあり、やっぱりエリンとリランの関係が一番好きだなぁと感じました。
言葉を正確に伝え合うことは出来ないかもしれないけれど、そばにいて触れ合うだけで確かな絆と繋がりを感じることができる。
そんな存在だと思うのです。
異種族間の交流好きな私にはたまらないです。
ラストは辛く悲しくもなりましたが、同時に人は過ちを犯しながらも学び反省し前へ進んでいける、エリンの思いは未来へと伝わっていくんだ、という喜びに心を満たされました。
歴史を正確に伝える事の恐ろしさと大切さの二面性についても考えさせられたようにも思います。

あ行

Posted by tukitohondana

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