三好長慶
三好長慶 (光文社文庫―光文社時代小説文庫)
群雄割拠の戦国時代、都では官僚細川氏の臣下であった三好長慶は、守役松永久秀の知略の援けられ、将軍を凌ぐ実力者となった。
だが「いずれはその権力も全て我がものに」と、久秀はひそかに機会を窺っていたのだ。
一時期、天下を掌握した三好長慶の障害と、彼の周囲の人々の生きざまを描く。
松永久秀が小説の主人公の座まで長慶から奪うという下剋上展開…のような情報を得て読んでみました。
実際、最初からどっちが主人公だよ、と突っ込みたくなるぐらい久秀が目立っています；
かといって長慶の影が薄いかというとそうでもありません。
むしろ、善良な長慶と野心家の久秀は対称的で、互いの性質を際立たせています。
三好家側からの視点で物語は展開するため、松永久秀主人公の小説とは違い、三好家の魅力と共に哀れさがよく出ている作品だと思いました。
三好家が力をつけたのも松永弾正の存在あってこそですが、次々と長慶の身内が亡くなっていくのは読んでいて辛かったです。
少しずつ正気を失っていく長慶が、最後に久秀に言った言葉も印象的で好きです。
善良で人が良いゆえに悲惨な結末を迎えた三好長慶と野心家で悪巧みが好きな松永久秀が読みたい方におすすめ。