月下花伝・花伝新選組

越水 利江子
大日本図書
発売日:2007-04

祖父から剣術を習って育った少女・飛秋。
彼女は倉で見つけた古い新撰組映画のフィルムを眺めるのが好きだった。
ある日、映写機でその映像を見ていた秋飛の前に沖田総司が現れて…
激動の時代を駆け抜けた青年・沖田総司と現代の少女・秋飛の時間が交差する淡い恋と少女の成長の物語。

物語の導入部分からして良い意味で期待通りで嬉しかったです。
主人公の秋飛がトリップ(もしくはタイムスリップ)するのかと思っていたら、読んでみると逆でした。
それぞれの世界で誠実に一生懸命生きる人々の姿が輝いていて印象的でした。(もちろんそうじゃない人物もいましたが)
主人公は色々な意味で強いのですが、普通の女の子らしい部分もあってバランスが良く好感が持てました。
それにしてもすでに亡くなっているのですが、回想で登場するじいちゃんのが素敵です。

自分の仕事に打ち込みながらも秋飛は沖田総司との出会いを忘れられずにいた。
そんなある日、彼女の魂が幕末にタイムスリップして新選組隊士の中に憑依してしまった!?
戸惑う秋飛は否応なく戦闘に巻き込まれ、泣いたりわめいたりしながらも新選組隊士として生きていく決意を固めていく。
作品紹介を読んで、これは燃え&萌えそうだなと思い「月下花伝」とセットで手に取りました。
王道ですが、新選組のメンバーと仲良くなっていく過程などはやはり好みの展開で萌えながら感動しました。
普通のタイムスリップもいいですが、憑依トリップもそれゆえの物語が展開して切なかったりして良いですよね…

隊士に憑依してしまってからの秋飛や周囲の反応には笑いました。
立場も問題ですが、まず男に憑依してしまったというのが辛いですよね;(秋飛の場合は予想より早く適応していましたが、物騒で慌しい日常の中では性別が変わったぐらいは些細なことだったのかも)
設定のためもあって恋愛要素は薄めですが、秋飛の淡い恋心というか総司を慕う思いは読んでいて切なかったです。
私としては、これぐらいの距離感や緊張感が心地良く感じられました。

全体的には読みやすい歴史小説のようで、たまに脇役である秋飛にスポットがあたるという内容。
後半にいくほど主役は秋飛というより新選組という印象が強くなっていきます。

か行

Posted by tukitohondana

inserted by FC2 system