暁を抱く聖女(ラ・ピユセル)

暁を抱く聖女(ラ・ピユセル) (角川ビーンズ文庫)
吉田 縁
角川書店
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気が強くてがさつな少女ジャンヌ・ダルク。
彼女は襲撃にあった村から自分を助けてくれた美しい騎士を探して旅立った。
だが、いつの間にか『フランスを救う神の使者』という噂が彼女につきまとい始める。
聖女として祭り上げられながらも、ひたすら騎士を追い戦場にまで出るようになるジャンヌに勇将ジル・ド・レは嘲笑を浴びせながらも懸命に守ろうとする。
そんな彼には秘密があった…

学生時代に読んで再読したいと思っていた作品の一つです。
お転婆ジャンヌは応援したくなるタイプ。
助けてくれた騎士を探す様はまっすぐで気持ちもいい。
男装モノ好きとしても嬉しい展開。
重いものがのしかかってくるようではあるけれど、勘違いモノ好きとしてもラ・ピュセルの噂はドキドキしてしまう。
ジルは本当は優しいけどあの態度。ギャップがいい。
幼い頃に悪魔に取り憑かれれば性格は歪みもすると思うけど、ジャンヌを悪魔から遠ざけようとする所は誠実で歪みないんだよね。
彼の危うい部分とそのギャップに萌える。
大砲や長弓を騎士道に外れると嫌うラ・イールに対するジャンヌの考えが、ちょっと女信長を思い出させた。
ラ・イールの考えはかっこいいけど、ジャンヌの言っていることの方が正しい。
正しいってことは善い悪いとはまた別物なので、ただ戦いで勝つという面から見れば正しいということだけど。
ただ一人の騎士に会いたいという少女の強い願いが、大きな運命を動かす。
神の声を聞いてフランスのために立ち上がったというより、ある意味現実味があって感情移入し易いかもな。
悪魔の存在はあるけど。
彼女の成長や初陣での反応など、ちょこちょこ重めでそこもいいです。
ジル・ド・レが自分の探している騎士だと気づかないジャンヌを見ているのはもどかしいですが、いつ気づくのかという期待と不安でドキドキしてたまらないです。
ジャンヌをラ・ピュセルと呼び祭り上げる流れにはぞっとするものがあったけど、最後にジャンヌをかばったかつての酔っぱらいにはなんともいえない気持ちに。
彼女の存在と周囲に与えた影響には感動してしまう。
侍従長とジルの祖父は最後まで分かり易い悪役というか嫌な奴だったな。
ルイはいい子なだけど、彼の書いていた報告書が利用されてしまったというのがあわれでならない。
民の中に希望をもたらしたという側面もあったと思うけれど。
ラストはちょっともやっとしますが、穏やかで不思議なハッピーエンドだったということでよかったです。
悲劇も好きなのですが、ハッピーエンドがやはり大好きなので。

や行

Posted by tukitohondana

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