ダークホルムの闇の君

ダイアナ・ウィン ジョーンズ
東京創元社
発売日:2002-10

別の世界から事業家チェズニー氏がやってきて40年、魔法世界ダークホルムは観光地になってしまった。
それによって諸国の財政は危機に瀕し、街も畑も荒れ放題。
この世界を救う人物として神殿のお告げが選んだのは魔術師ダーク。
彼の妻と一男五女グリフィンの子供たちまで巻き込む騒動の顛末は?
ファンタジックな異世界が観光地になっていて…というファンタジーを少々皮肉ったような作品。
設定が面白そうだったので結構前から読んでみたかったのです。
始まりからしてなんだかダークホルムの住人が気の毒になるような内容で、予想以上に厳しい状況みたい。
いわゆる悪の親玉的存在“闇の君”役となった魔術師ダークによって、どう事態が変化していくのか楽しみ。
魔物の後ろ盾つきで、巡礼団はこちらの民を殺していくし、捨て石の観光者を作るという怖い商売もやってるチェズニー氏。
作品的には彼が悪役ですね。
ダークの家の近所の村長がすごい…村を廃墟にするにあたってぬかりなさすぎて感心してしまった。
マーラ強いなぁ…ダークの危機を察知して駆けつけて龍に命令するシーンはかっこよかった。
龍の態度の変わりようには苦笑。
三百年眠っていた龍の事情もわかる。
彼の話によると、昔は普通の魔法世界だったんだなぁ。(普通というのもなんか変な気分だけど)
何とか闇の君の役を務めようとしている皆の様子を読んでると本当に大変そうだった。
しかも、彼らの場合は何か野望や目的があるわけでもなく、ただ父親が君に選ばれたから、それをやらなければいけなくなっただけ。
そこが辛い。
仲違いしつつも、ダークの心配をしたり協力してやらなければいけない事を遂行していく様子はいい。
家族の絆みたいなものを感じました。
味方になると高齢の龍もたのもしいな。
戦の現実的で残酷な所や泥臭いシーン、幻想的で美しい部分とリアルで汚い部分の両方が書かれているのがよかった。
悪を演じる様も面白い。
最初はそうでもなかったけれど、物語を読み進めれば進めるほどこの世界に入り込んでいきました。
いつの間にか役目に熱中する者、そして裏で動く者。
それぞれの思惑が最終的にどこへ行き着くのか? チェズニー氏の巡礼観光団をやめさせることはできるのか?
気になるとページをめくる手が止まりません。
想像以上に上手く闇の君をやってますし。
某グリフィンが矢で射られ、某人物の裏切りが発覚し、それまでもあった混乱の度合いが高くなっていきます。
もうその頃には、何とかダークの家族だけでも皆生きて物語の結末を終えて欲しいと願っていました。(それぐらい殺伐とした状況になっていっていたので)
終わりが近付くとそれぞれの今までの思惑と行動が明かされ、感動の再会もあり、嬉しい展開。
やっと家族がそろったことにほっとしました。
今まで感じていたもやもやもなくなりすっきり。
ウロコが大好きです。
最初登場した時はまさかここまで活躍してくれるとは思わなかった。
彼の正体にもテンションがあがりました。
しかも、あの人たちも正体を隠していたとは…
所々現れていた謎の人物の正体には途中でもしかしたらと思っていたのですが、やはりそうか。
途中不安なこともありましたが、最後は綺麗な大団円で爽快でした。

さ行

Posted by tukitohondana

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