氷の心臓

カイ マイヤー
あすなろ書房
発売日:2008-11

何者かが雪の女王の心臓のかけらを盗み出した。
力を失った女王から冷気が溢れ世界に流れこみはじめる。
凍りゆく世界の運命は…
ロシア革命前の混乱のサンクトペテルブルクを舞台にしたミステリアスファンタジー。
現実の中にほの暗いファンタジーの世界が混ざっていく感じのお話。
雰囲気が同作者の鏡の中の迷宮とやはり少し似ているなと思った。
とにかく謎が多くて展開が見えてこなくて面白い。(それでもやっとする事もあったけど…)
心臓の一部を盗まれた雪の女王は今後どうなるのか?
タムシンはどうやって雪の女王を倒すつもりなのか?
その争いに偶然(?)巻き込まれた少女マウスの運命は?
冬将軍のキャラやマウスの隠れ家など私好みの要素がちょこちょこ入っているのが嬉しい。
マウスとククシュカの関係もいい。
辛い境遇の中での唯一頼れる存在で勉強の面では師でもあるっていう。
ククシュカがマウスを友好的に見ている事はよく伝わってきていたので、マウスが彼に嘘をつくシーンはマウスと共に胸が痛んだ。
ククシュカについては後に明かされた正体も込みで好きな登場人物だった。
ククシュカの言う辛さや寂しさ、マウスをいじめる人々の心等の話についてはすごく共感した。
タムシンはどうも好きになれなかった。
やろうとしていることは別にいいと思うんだけど、言ってる事というか思想が傲慢に思えてしまって;
そう感じていたので彼女が下した決断には驚いた。
七つの門の魔法の内容は想像したことのない状況と展開で面白い。
エルレンが可愛い。
本当はトナカイであるがゆえの純粋さというか裏表のない感じも好きだった。(信じられる相手がいない物語だったので余計かも)
意外な行動を取る人物、正体に驚かされたり感動したり…リアルで残酷な面もあるけれど、優しくて面白い物語でした。
この後、マウスたちはどこでどう過ごしたのかを考えても楽しい。
思っていた以上のハッピーエンドでした。

ま行

Posted by tukitohondana

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