夜明けまで


名高い傭兵MJと火乃香の出会いと正体不明の敵ファントムとの戦いを書いた「夜にひそむ」
砂漠で消息を絶った学術調査チームの捜索依頼をうけた火乃香は、そこで謎の生物と一人の男に遭遇する。
ファントムとの初めての遭遇を書いた短編でもある。
本編の前とはいえ、火乃香の抜刀を止める事ができるレベルの強さを持つ人物の登場がまずインパクトのあるお話。(火乃香強いからなぁ)
傭兵MJの余裕が心地よい。
初対面でここまで安心感を感じさせる人物は珍しい気がする。
MJを殴った女ってパイフウかな。話の内容からして。
ファントムに襲われたMJを助ける時の火乃香の怒り、無想の境地の中で鞘走る愛刀。
この頃には今の火乃香がほぼできあがってたんだなと実感。
辺境で何でも屋をやっているから割り切っている所とか境界線はあるだろうけど、危険な状況でも自分がやろうと思った事をやり遂げる。火乃香の魅力の一つだと思う。
彼女の思考とか行き方とか人との接し方も大きな魅力だけど。
MJの誘いを受けなかった火乃香とボギーの会話が好き。
ああ、ボギーは本当に火乃香のことを理解して信頼しているんだなというのが伝わってきて。
初めて荒野に出た少女が火乃香と出会って世界や生命について見つめなおす「デューン・ランI」
自分と今の生活に我慢ができなくなった家出少女と火乃香との出会い。
基本的に三人称のザ・サードで一人称の話が読めるというのがちょっと新鮮かも。
レイファンには共感する部分もあって、彼女が火乃香と出会えたことに感謝したくなった。
火乃香の言葉を読むと世界や生き方に対する思いが少し変化するというか…何とも言えない思いがこみ上げてくる。
ああ、受け入れてくれる存在がいたっていう気がするんだよね。勝手ながら。
パイフウの過去を垣間見ることができる、彼女と暗殺者の一夜「残影」
ある夜、パイフウを襲撃したのは彼女の育ての親的存在だった。
この話のあとがき読んで、『風花の~』を読み忘れていたことに気付きました;
あちらは持っているものの未読です。
ハデスの存在が気になったり、大丈夫だとわかっていても戦闘にハラハラしたり、パイフウに変化をもたらした火乃香にときめいたりしてました。
火乃香が登場しない話は最初の頃はあまり興味が持てなかったのですが、今はこのザ・サードの世界観が好きですし、何より登場しなくても火乃香の存在感がありますからね。
火乃香の事が好きな先生(パイフウ)が好きです。
大戦中に作られた生物兵器が生み出した悲劇の中で火乃香は浄眼機というザ・サードと出会う「裏切り者の心臓」
砂上戦車のメンテナンスをしてもらうためザンカンのもとへ向かう火乃香は、闘いを求める存在と出会う。
そして、ついに明かされる浄眼機との出会いも…
浄眼機とアレクセイ…似てないんだけど、ザ・サードの変わり者同士のやり取りはなんかいいな。
ザンカンも懐かしい…
ミリィも浄眼機と同じく色々あって変わる前なわけで、本当懐かしい感じがします。
浄眼機には火乃香のストーカーというイメージはあったのですが、出会って早々火乃香本人から言われてたか…
忘れていたので、笑ってしまいました。
ハイペリウスへの誘い、火乃香の気を操る力、互いに衝撃を与える出会いだよなぁ。
この後、互いを信頼するような関係になっていくことを思うと萌えます。
この二人大好きな組み合わせなので。
火乃香とカズミの心の交流みていると、余計に大戦時の兵器が恨めしくなる。
自分が自分でなくなっていく“裏切り者の心臓”は恐い。
カズミが抱えていた恐怖や苦しみ、浄眼機に止められながらもカズミのところに向かった火乃香の事を思っても辛い。
カズミが最期に取った行動からして、彼自身は優しくて強い心を持っていただろうし、火乃香との心の距離が近くなっていたんだなと感じて切なかった。
ラストのボギーがまた泣ける。
相棒のボギーがこういう存在だから火乃香は彼女らしくあれると思うのです。
火乃香たちの乗っている戦車の車体に取り付いた機甲アリと火乃香たちの長い一夜「夜明けまで」
アニメでも映像化されていた短編なので印象の残っています。
ある夜、鉄甲アリの“巣分かれ”に巻き込まれた火乃香たちの夜明けまでを綴った短編。
短いながらも、ザ・サードの生態系や生き物について興味をひかれる内容でした。
作品の雰囲気が好きです。
何気ない日常を書いていても、ああザ・サードだなぁって思える世界観や思考があるんですよね。
このシリーズって。

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