戦国の女たち―司馬遼太郎・傑作短篇選

戦国の女たち―司馬遼太郎・傑作短篇選 (PHP文庫)

戦国乱世の時代、女性もまた闘いの日々を送っていた。
夫を働かせて財を気付いた遊び好きの妻・小梅
豊臣秀吉の妻・北ノ政所
兄・秀吉の思惑によって翻弄され続けた妹・旭姫
夫・細川忠興の異常な嫉妬にさらされ続けた加羅奢(ガラシャ)
変わり者の侍大将・渡辺勘兵衛に思いを寄せる人妻の由紀
一夜の出会いを胸に抱き続けて生きていく純情な女性・小若
六人の女性たちの物語を集めた短篇集。

最初にあった小梅の話(女は遊べ物語)は、結末が気の毒な気もするけれど、軽く読みやすい作品。
欲しいものがいっぱいある妻のために夫が戦で手柄を立てていく。
秀吉が評価したように、この妻がいたからこそ出世も出来たといえなくもない…かも。
この夫婦のそれぞれ可愛いところがあって展開も面白かったので、その後の話も一気に読み進められました。

北ノ政所の話と旭姫の話(駿河御前)の物語は重め。
個人的には他の話の方が好き。
でも、どの話でも秀吉がとんでもないことしてるのに、憎めないんですよねぇ。

ガラシャの物語(胡桃に酒)は、あまりの夫のヤンデレっぷりに吹きました。
ただ、妻が好きで仕方ないんだ、という態度には萌えずにいられない。
強くなっていく狂気と愛憎。なんか歪んじゃってるけど、あれも純粋だったゆえなのかガラシャの美しさが罪だったのか。
たま(ガラシャ)の賢さと冷静さが魅力的な物語でもあると思います。

一番好きなのは渡辺勘兵衛に思いを寄せる人妻の由紀の物語(侍大将の胸毛)です。
タイトルで笑ってしまったんですが、いや内容のあまりのプラトニックっぷりに萌えました。
勘兵衛に心惹かれた由紀の無邪気で大胆な行動は可愛くて、それに対する勘兵衛の態度も萌えた。
気づいてるけど、人妻だからその思いは表に出さなくて、最後の最後でやっと二人の思いが通じ合う瞬間とかあれは萌えざるをえない。

二番目に好きなのは、小若の物語(一夜官女)です。
立ち寄った村で明神様への生贄に選ばれた小若と、彼女と一夜の契りを交わした岩見重太郎の悲恋話。

結末だけを見るならハッピーエンドはないですね。
ただ、それぞれの幸せな時はあってそれを抱いて生きていく、己の意思を貫き通すなど……それぞれ精一杯生きている様を見ることができます。
切ないけれど、重すぎて読み辛いという話はないので、そこもいいところかと。

さ行

Posted by tukitohondana

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