模倣犯 (下)


前巻で殺されかけてた木村さんを心配しつつ下巻へ。
ここに来て浩美が上下関係だけでなく学校で大っぴらに和明を虐めていたことも語られ、ますますなんで奴を信じた?って思ったけど、想像以上に和明がいい人でますます悔しい。
気づいてたけど助けたかったんだというが…回想読むと納得してしまうけど、この人の良さと強い心はなかなか持てない。

そして、問題はピース。
どちらかというとこっちの方悪役としては好きだけど、彼の言う本物の悪を気取って演じてるだけという気がして微妙。事件をドラマティックに演出しようとしてるから、演じているだけって言うのはある意味あってるのか。
由美子に接触してきた時はヒヤヒヤした。こいつ抜け抜けと…学生時代の同級生の評価は悪い話もあった浩美と違っていいものばかりでぞっとした。二面性怖っ!でもこういう悪役好きだし周囲にバレる瞬間が楽しみで読み進めた。

浩美の姉の死因には納得。寿美子が育児ノイローゼだと当時誰かが気づいていれば浩美の人生は変わっていたのかも。浩美と和明の結末がピースに始末されるよりはましかもだけど、キツイ。

建築家ってあだ名の元刑事さんの話面白い。事件現場で建物ばかり見てたとか建てた人の性格が家に出てて、それで犯人が分かるっていうの。
今回の事件の推理も建物の情報少ないのに別格。胃に何度も穴があいてなければ刑事続けて欲しかった逸材。
この辺り読んでから網川が建築家の想像した犯人像に当てはまるって早く気づいて欲しかった。

結末に向け関係者たちが動き出す。調子に乗りすぎたピース。新たな死者。真相にひっそり近づいていると思われる刑事たち。
やっとか、と思ってたとこで某人物の死は辛いとこだった。
演出された出会いと関係だったとはいえ依存が強くて苦手だったけど、あの結末は惨い。
幕引きも劇的で皮肉にもそれはピースが敵として用意した駒からの挑発によるものだった。
模倣犯というタイトルの意味がここにきて出てくるのか…
滋子、義男、真一、警察、それぞれの思いと行動がやっと報われる瞬間はすっきりした。
ほっとしたとこで柿崎校長が和明をいい子だったと言っていて涙腺に来た。彼を信じていた人たちにとっても長い時間だっただろうなぁ。
この作中で一番公平であるがままを見てる気がしてた義男が、事件が解決に進む中で見せた激情にも泣いた。ああ、冷静なわけじゃなかったんだ。この人はずっとそこに蓋をしてただけなんだって。

ま行

Posted by tukitohondana

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