獣の奏者 (3)探求編

上橋 菜穂子
講談社
発売日:2009-08-11

闘蛇編・王獣編のレビューは↓
http://tukiyogarasu.blog80.fc2.com/blog-entry-25.html
あの“降臨の野”での奇跡から十一年後。
エリンは大公の命である闘蛇村で突然起きた“牙”の大量死の原因を探りに向かう。
“牙”の死の真相を探るうちに見えてきたのは、歴史の闇に埋もれていた驚くべき事実だった。
母となったエリンは、すべてを知った時、母ソヨンとは別の道を歩む決意をする…
王獣編のラストの感動があまりに後を引いていたため読むのをためらうこともあった三巻探求編。
でも同時にとても気になっていたので図書館で発見したときは嬉しかったです。
ソヨンが冤罪によって裁かれる原因となった闘蛇の牙の大量死。
なぜ牙たちが亡くなったのか?というのは大きな疑問として頭の隅に残っていました。
エリンがその答えに行き着くのが嬉しい反面、残酷な真相にはなんともいえない悲しみと虚しさを覚えました。
多くの人間の思惑が自然や生き物をいびつなものに変えていく。
そう考えると怖い。現実でも似たようなことはあるでしょうし。
かつての真王と大公の対立の時に感じた立場による考えの違いを今回ではより強く感じました。
何が正しくて何が間違っているのか。
この作品の場合はそれを決めるのが難しい。
そこがリアルだと思います。重くて甘えを許さない辺りは今までと同じですね。
多くの人の意思と絆が大きな流れを生み出していて、個人はその中では小さな存在でしかなく、その流れを止めることも逆らうことも非常に困難。
でも、そんな厳しい流れの中で強い意思を抱きたくましく生きる人々の姿がとても印象的でした。(最善の道を真摯に探そうとする姿といったほうがいいかな)
ロランが好きです。
生き方も好きなのですが、彼の言葉はなんか読んでいてなんともいえない気持ちになる。

あ行

Posted by tukitohondana

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