デカルコマニア

長野 まゆみ
新潮社
発売日:2011-05

21世紀の少年が図書館で見つけた革装の古書には、亀甲文字で23世紀の奇妙な物語が綴られていた。
時空を超えた不思議な一族の物語。
時代の移り変わりに関する内容にドキッとするものや、うんうんと頷いてしまうものがあった。
“書物の電子化とともに、文字情報にたいする信頼がゆらぎつつある”という事の詳細もその一つ。
D卿とその一族と周辺の人々の物語は度々登場するロマンという少年の存在を中心に不思議で心惹かれるものがある。
ただ、深読みするのが好きだけど苦手な私は何度か混乱しかけた;
正直、≪デカルコ≫のことが理解できてないためもあったと思う。
次々と視点が切り替わる中で、読み進めると今までの話との繋がりが見えてくるのは楽しかった。
一番気になっていたのは≪デカルコ≫によって250年前の世界に現れたアルクがどうなるか。
ルビとロマンの出会いはちょっと萌えた。
それにしても隠語ふせられると汚いものも性的なものも妖しく幻想的なものに聞こえるからなんとも不思議。
この話も食べ物が美味しそう。
長野さんの作品に出てくる食べ物は本当に食べてみたくなる。
ロマン=ロレ=レモン=オレオ=ロマネス=スワンスオン
ということでいいのかな?
ぼかした部分は詳細を書かずに終わるかと心配してたけど、後にちゃんと語られていて嬉しかった。(曖昧なまま終わる方がいい事ももちろんあるけれど)
なるほど、あちこちに現れていたロマンという少年の謎や皆との繋がりが分かってすっきり。
ルビが企んだシルヴィオの仕返しについては短い記述だったけれど笑ってしまった。
最後の方でレモンとレカの会話が物語の謎の一部を語っていて、ああそこまでつながっていたのかと驚いた。

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