完璧な涙

2022年7月24日

神林 長平
早川書房
発売日:1990-05

感情を持たない少年・本海宥現。それゆえに家族との絆を持たない彼はある日砂漠の旅に出る。
街は銀妖子と呼ばれる謎の生き物が管理し、砂漠では街に住むことを拒絶する人々旅賊がいる。
彼らの中に、宥現の運命の女・魔姫はいた。
二人の出会いもつかの間、突如砂の中から現れた戦車が二人の間を切り裂き執拗に追ってくる。
それは、自らに危害を加える相手を破壊しつくす過去からの殺戮者だった!
未来と過去の争闘に巻き込まれた少年の物語。
感情がなくそれを理解できない少年宥現。
砂漠が広がる未来の地球では謎の妖精銀妖子が人々の街の食べ物を供給し、壊れた物を勝手に修復していく。
遺跡の発掘によって出てきた戦車は自分を調べようとした人間に攻撃されたと勘違いし報復を始める。
異なる種、存在が同じ場に存在しながら理解し合えない。
それでも、魔姫という女性の死に宥現が用意された“涙”を流し続けるシーンでは、他者と繋がろうという宥現の意思を見ることができた気がした。
人に何をされても無反応で淡々と役割をこなす銀妖子はとても不思議な存在で不気味だけど凄く興味をそそられる。
何者なんだろう?
始めに出てきた町も銀妖子によってなりたっているという点で不思議だったけど、次に出てきたのは死者の街。
死体がエリクサーという薬によって動いて生活している。
墓に入っている人物にも処理を施して結婚できるというのが面白いと思った。
それぞれに役割があり、罪人まで最初から用意されている。
老人オッド・アイが見ていたものが何であったにせよ、左右の目で見える世界が異なるというのはぞっとする。
時間と感情の関連か…考えたことなかったけど過去も未来も存在しないなら生じない感情というのはあるかも。
未来がなければ悲しみや恐怖なんて感じないだろうし、過去がないなら喜びや不安を感じる理由がないということもあるかも。

神林長平

Posted by tukitohondana

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