サマー・キャンプ

長野 まゆみ
文藝春秋
発売日:2000-04

夏休暇も間近なある日、湾岸校に通う温(ハル)は、ルビと名乗る少年から契約をもちかけられる。
無口な少年と手癖の悪い女の子…二つの人格を備えたルビを、離れて暮らす母は「あなたの弟よ」という。
次々と不可解なことをいう周囲の人々。
向けられる理不尽な言葉に温は困惑するが…
生殖医療の発展した未来を舞台に、血脈を越えた人間の絆を描く。
好みの内容だった記憶はあるのに、ストーリーをまったく覚えていなかった小説。
飄々としている大人の男、積極的に近づいてくる謎の少年、ドライな思考を持っているかと思えばちょっと鈍くて感情的な主人公。
この少年二人と大人の男一人という構図がいかにも長野さんだな。
性に奔放でSF的な世界観も作者らしくていいです。好き。
温はちょっと鈍いところはあるかもしれないけれど、ヒワ子さんの彼への態度は理不尽すぎるような…
皆コンプレックス強いなぁ。
温への批難が読んでいてつらい。
こっちも温が身に覚えのない部分は知りようがないし;
温が違うといってた存在に近いには何となく気付いてました。
思っていたより複雑な家だった。
温は意識してないみたいだったけど、確かに他者を見下す見方はしていたし、その点では彼を叱り責めた人たちに腹を立てるのも妙かなという気はする。
性行為と愛情は直結しないけど、愛情も存在しないわけじゃない。
人はいつか生殖行動なしに子供を誕生させ、性別や親子関係は大きく変化していくのかもしれない。
人間という種は遺伝子だけでなりたっているわけではなく、染色体だけで性別を決定付けることはできない。
愛情は本能(生殖活動)に依存するものではない。
…とかそのあたりのことがテーマなのかな?
深すぎて難しい。
なんかこれは萌えだけでは読めない話だった。
人がいかなる方法で種を繋いでいくことになっても、性別、生殖、愛情の問題や悩みはなくならないという気がしました。
長野さんの作品ではよくあることだけど、これもどこからどこまでが現実で幻だったのかがよく分からなかった;
主要人物が最初にいた居場所に戻ったのは確かなんだろうけど。
辰(トキ)と温(ハル)の関係が好きでした。

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