探偵伯爵と僕

2022年7月24日

夏休み直前に新太は公園で伯爵伯爵と出会う。
彼はアールと名乗り探偵だと言った。
夏というのに黒いスーツ姿で奇妙な行動をとる彼に新太は興味津々。
ある日、新太の友人二人が続けて行方不明に。
共通するのは残されたトランプ。
新太と探偵伯爵は事件を追うが、ついに新太にも犯人の影が忍び寄る。
少し価値観が独特な伯爵と名乗る男と彼と出会った少年の会話がメインに話が進む。
伯爵があやしいという以外インパクトがないが、そいう言われてみれば…とはっとさせられる問答が面白い。
このまま二人の交流だけで話が進むのかと思っていたので、事件が起きたのはちょっと驚いた。(読む前はそれを期待していたはずなんだけど)
殺人に対する会話も興味深かった。
あの手の議論は世の中でも今後も続くだろうけど、結論を出すのは難しい問題だよなぁ…
殺人と原因・理由についてはそれがあると考えた方が人は安心できるからつけたがるのかなと思う。
けど、同じ理由や状況があるから殺人が起きるわけじゃない。
殺人が悪い事ではなく嫌な事というのは一種の真理だなと思う。
嫌な事だったから悪い事だとされるようになったはずだ。逆じゃないよね。
物語内であった出来事はそんなに難しくないけど、何気ない会話や主人公の考えの中に深い真理や問いかけ、問題がひそんでいる作品だと思った。
最後の伯爵の手紙でびっくり。
そういえばこの物語は主人公が日記を書いてるって形式だったな…まんまと全てが物語中では真実だと思い込んでた;
自分の単純さに絶句。
考えているようで何も考えていない事を確認した気分。やられた。
でも、どうせならあの事件全てが作り話なら…そう思えるような悲しい現実があったあたりがリアルだった。

森博嗣

Posted by tukitohondana

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