はしたかの鈴

芦屋道満が題材の小説が読んでみたくて手に取った本。男装の少女とか訳あり年の差コンビという点も惹かれる。鷂は子供が必要な姫の願いによって実の親から引き離され、その上不気味だからという理由で塗籠に閉じ込められた過去を持つ少女。何を考えてたのか分からないけど引き取った道満よくやってくれた!と思う。道満と鷂の出会いの話は道満が彼女を助けたという感じでないけれど、それはそれでよい。
鷂に記憶や絵に関する才があったり式神扱いされているのは単純に謎だな。これのおかげで道満と一緒にいられるわけだけど。

都合が悪くなると道満が鷂をさして「私の式神が見えるのですか?」と言い始めるのがなんか面白い。怪異を信じない陰陽師というのも面白い。そういえば応天の門も怪異と見せかけて人の仕業ってパターン多いんだよな。怖いのは幽霊ではなく生きた人、という話は物語的には好きなので想定外だったけどこの小説好みかも。

双六賭博の話は鷂の能力がこんなことにも使えるとはと感心しつつ面白かった。道満が己のためにとる言動が他者には優しくみえるのがなんとも…結局親切って返ってくるってことよな。そこに善意があろうと悪意があろうと。道満を面白かった双六に誘う鷂も、それを断る道満の理由もどちらも可愛くて良い。このコンビ好きだ。鷂が鈴をつけている理由もエモかった。

鷂が奉公に行く話も二人の関係に変化が見られて楽しかった。一日の報告を逐一する鷂や道満が選んだ色の袿を喜んで着ている鷂が可愛くて良い。どちらかというと微笑ましく暖かいお話だったのでその分結末が物寂しかった。鷂が感情的になっていくことを喜んでいたけれど、彼女が普通の人に近づくのははたしていいことなのか?という疑問が浮かんだ。人並みに記憶を失うのは問題ないだろうけど、彼女の身の上に限らず人の世は辛いことや悲しいことが多いので。

道満が怪異を信じない陰陽師になった理由がわかり易く辛い。雪のような存在を村人たちが恐れたのも時代的に理解できなくはないけど惨い。物語的には亡くした大切な人を忘れられずそれが人生を決めたキャラ好きなのでこの道満非常にエモい過去持ちではある。
道満と鷂の関係や変化が好きなだけでなく安倍晴明のキャラも良いキャラだったので続編がぜひ読みたい。ないんだけど!

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